研究概要 |
強磁性体の固溶系Sr_<1-x>Ca_xRuO_3をミクロスコピックに研究したところ,従来信じられていた描像と異なり,遍歴電子の強磁性相互作用のみが存在していることが明らかになり,また,Sr_2RuO_4におけるクーパー対の対称性が強磁性相互作用的なP波であるということが最近明らかになり非常に注目されている.本研究で,Ru酸化物系において磁性と超伝導の共存研究を行った結果,層状ペロブスカイト型化合物EuSr_2RuCu_2O_8の単一相の合成に成功し,RuO_2の作る2次元的強磁性(T_c=130K)とCuO_2の2次元的超伝導(超伝導転移温度T_<cs>=40K)が共存していることを見出した.T_<cs>以下の電気抵抗ゼロやマイスナー効果といったマクロな物性で超伝導を確認したのみならず,^<99,101>Ru核のNMR測定によっても共存を確認した.強磁性転移温度T_c以下で,RuのNMRは内部磁場をもった強磁性に特有な振る舞いが観測されるが,この強磁性状態でのNMRのスピン格子緩和率を測定していくと,超伝導転移温度T_<cs>以下で,超伝導発現の影響を受け温度の2〜3乗のべきで緩和していくことが観測された.この振る舞いは,高温超伝導やSr_2RuO_4と似ているが,べきの指数など異なりこの系の超伝導発現と密接に関連していると思われる.更に,量子的な自由度のオーダー・ディスオーダーの境である量子臨界点近傍の物性は,強い電子相関系の問題において非常に興味深く,その意味からも磁性と超伝導の競合は興味深い.今後,更に,このペロブスカイトを基本としたルテニウム酸化物の異常な遍歴電子磁性・超伝導を詳細に調べ,化学的に新しい磁性超伝導体の創製を目指していく予定である.また,Na_3Ru_4O_9など新しい物質群も見つかってきており,磁性と超伝導の関係やその起源などについて明らかにし,Ru酸化物系を中心に磁性と超伝導の共存する化合物を探索・合成していく予定である.
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