研究概要 |
高温超伝導の発現以来,銅のペロブスカイト酸化物が大きく注目されてきたが,3d遷移金属酸化物以外にも電気伝導性の高い金属的な遷移金属酸化物は多数存在する.その中でも周期律表で鉄の真下に位置する4d遷移金属系のルテニウムRuのペロブスカイト型酸化物に注目した.YBCO型の複合酸化物,EuSr_2RuCu_2O_8において,強磁性と超伝導が共存していることが確認してきたが,このCu・Ru複合酸化物系化合物の完全な単一相化に成功し(粉末X線回折・単結晶4軸X線回折実験,熱重量分析実験,走査型および透過型電子顕微鏡観察,EDX測定などによって,結晶構造や酸素量の不定比性に関して化学的にキャラクタリゼーションを行い確認された),^<90.101>Ru核のNMR測定などによって高温超伝導と強磁性の共存が本質的であることが確立された.その超伝導の振る舞いはSr_2RuO_4(p波超伝導)や銅酸化物高温超伝導系(d波超伝導)と類似であることが明らかになり,その発現機構やクーパー対の対称性などが問題であって,今後明らかにしていく予定である.また,新物質Na_3Ru_4O_9が低温まで一次元的金属伝導を示すこと,室温以上の高温(約580K)でスピン一重項転移を示すことが明らかになってきた.この転移点以下の一次元金属的なスピン一重項の電子状態はいかなるものであるのか問題であり,今後明らかにしていく予定である.また,スピン・フラストレーション系であるパイロクロア型5d遷移金属酸化物Cd_2Re_2O_7において新しい超伝導の発現が観測された.転移温度は1.1Kと低いが,反強磁性的スピン・フラストレーションと超伝導発現の関係など今後の課題である。ごれからも,^<17>OのNMR測定などによって,磁性と電気伝導性・超伝導との関係やその起源などについて明らかにし,Ru酸化物系を中心に磁性と超伝導の共存する化合物を探索・合成していく予定である.
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