両親媒性物質のナノスケール構造の物理的因子による調節

2000 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12440200
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 前田 悠 九州大学, 大学院・理学研究院, 教授 (20022626)
• 研究分担者: 深田 和宏 東京都立大学, 大学院・理学研究科, 助手 (60212180) ; 懸橋 理枝 大阪市立工業研究所, 研究員 (70294874) ; 川崎 英也 九州大学, 大学院・理学研究院, 助手 (50322285)
• キーワード: 両親媒性物質 / アミンオキシド / 水素結合 / 粘弾性 / 水素イオン滴定 / ミセル / 相拳動 / 熱解析

研究概要

(1)長鎖アルキルジメチルアミンオキシド(CnDAO)固体相状態。(研究発表欄1,6)
炭素鎖長n=10,12,14,16,18の試料について、塩酸塩と半塩酸塩について、固体の相状態を示差走査熱量測定と偏光顕微鏡観察により調べた。その結果、アルキル基が秩序配列した固体S1,アルキル鎖が融解した固体S2,液晶、等方性液体の順序の相系列を確認した。半塩酸塩においても基本的に同じ相系列であった。半塩酸塩の特徴は(1)S2相が高温まで安定であり、(2)液晶→液体転移温度は鎖長の増大とともに減少する。前者は我々の提案している水素結合モデルの妥当性を支持する。
(2)赤外吸収によるC12DAOの極性基間水素結合の検証。(研究発表欄10)
C12DAOのカチオン種と半プロトン化種について、固体および液晶状態の赤外吸収測定を行った。半プロトン化種では、固体状態ではOH基の特性振動が1600cm^<-1>よりも低波数に連続吸収帯として出現した。これは水素結合による連鎖の存在を強く示唆する。液晶状態においても水和していないことが結論できた。カチオン種では、液晶状態では大部分が水和していることが確認された。半プロトン化状態で極性基間に水素結合が存在する分光学的知見が確立されつつある。
(3)長鎖アルキルジメチルアミンオキシド(CnDAO)水溶液の粘弾性。(論文投稿中)
(A)C14DAOについて、粘弾性に及ぼす濃度、イオン強度、温度の効果を調べた。緩和機構の異なる二つの濃度域を確定し、それぞれの緩和機構を提案した。(B)C16DAOについては、C14DAOの場合に比較して、粘弾性は増加したが、イオン化度依存性が著しく減少した。アルキル鎖長が長いために極性基の効果が相対的に減少した結果を示す。(C)オレイルジメチルアミンオキシドの場合、降伏応力が初めて検出され、半プロトン化状態において最大値を示した。
(4)長鎖アルキルアミンオキシド水溶液の水素イオン滴定。(論文投稿中)
CnDAOについては、ミセルのプロトン固有解離定数pK_0の鎖長依存性:C10<C12<C14〜C16を見出した。ミセルの球-棒転移と水素結合モデルにより初めて合理的に説明できる。温度依存性がない。

研究成果

• [文献書誌] H.Kawasaki et al.: "Solid state phase behaviors of dodecyldimethylamine oxide : protonation and counterion effects."Colloids Surfaces A,. 169. 117-124 (2000)
• [文献書誌] K.Fukada et al.: "The Structure of Lyotropic Liquid Crystals of Dodecyldimethylamine Oxide-HCl-Water System,"Langmuir. 16・6. 2495-2501 (2000)
• [文献書誌] H.Maeda et al.: "Effects of Protonation on Tetradecyldimethylamine Oxide Micelles,"J.Phys.Chem.B. 104・26. 6174-6180 (2000)
• [文献書誌] V.M.Garamus et al.: "Scattering from polymer-like micelles of Tetradecyldimethylamine oxide in salt/water solutions"Langmuir. 16・16. 6431-6437 (2000)
• [文献書誌] H.Kawasaki et al.: "A Bilayer Formed by Soluble Amphiphiles with Single Chain at the Mica-Solution Interface"Chemistry Letters. 972-973 (2000)
• [文献書誌] M.Miyahara et al.: "Effects of alkylchain length on the solid state phase behaviors of alkyldimethylamine oxide hydrochlorides and hemihydrochlorides."Colloids Surfaces A. (in press).
• [文献書誌] H.Katsuura et al.: "Interaction of partially ionized poly (acrylic acid) with a surfactant counterion at constant pH values."Colloid Polym.Sci,.. (in press).
• [文献書誌] H.Kawasaki et al.: "FT-IR Study on Hydrogen Bonds between the Headgroups of Dodecyldimethylamine Oxide Hemihydrochloride"Langmuir. (in press).
• [文献書誌] H.Maeda et al.: "Effects of Protonation on the Thermodynamic Properties of Alkyldimethylamine Oxide Micelles."Adv.Colloid Interface Sci.. 88. 275-293 (2000)
• [文献書誌] 前田悠: "気-液界面の基礎/界面ハンドブック"エヌ・テイ・エス社. (2000)
• [文献書誌] 前田悠,荒殿誠: "気-液界面で起こる現象/界面ハンドブック"エヌ・テイ・エス社. (2000)
• [文献書誌] H.Maeda: "Encyclopedia of Surface and Colloid Science Thermodynamic Analysis of Micellar Systems"Marcel Dekker. (2000)