研究概要 |
界面科学上の課題のひとつとなっている毛管凝縮および吸着ヒステリシスの全容の解明を目指して、いろいろな細孔径をもつ規則性多孔体のMCM-41、SBA-15および三次元チャンネル構造を有するMCM-48への窒素の吸着・脱離等温線を3重点と臨界点の間の広い温度領域で測定した。MCM-41とSBA-15はともに一様な大きさのシリンダー状の細孔を有する。吸着等温線の温度依存性から、いずれの多孔体においても温度の上昇とともに吸着ヒステリシスが縮小していき、やがて消失することがわかった。この温度はヒステリシス臨界温度と呼ばれるが、細孔内における液体と気体間の臨界温度より低温側に存在した。細孔臨界温度は吸着ステップの勾配の温度依存性から求めた。ヒステリシス臨界温度と細孔臨界温度を細孔径の逆数に対してプロットすることにより、バルク臨界温度から低下量は両者の温度とも細孔径に逆比例することを明らかにすることができた。ただし、ヒステリシス臨界温度は大きな細孔においてはこの逆比例の関係から外れ、細孔臨界温度に接近することがわかった。このことは,準安定状態と安定状態間のエネルギー障壁が大きな細孔では大きくなりすぎて、安定状態への移行が臨界温度まで実現できないことを示している。細孔臨界温度の低下量と細孔径との逆比例関係は微視的統計力学論の結果と一致した。さらに、毛管凝縮および毛管蒸発圧力の温度依存性から、毛管蒸発が必ずしも平衡状態で起きると限らないことが分かった。この結果は現在のこの研究分野で流布している一般的な見解を覆すものであり、細孔径分布の解析方法に大きな影響を与えるものと思われる。MCM-48の三次元チャンネル細孔構造は吸着ヒステリシスや細孔臨界性にほとんど影響しないことがわかった。
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