放射光によるナノ反応場の構築とそのSPMによる評価に加え、平成13年度より、この反応場における生体機能性物資の自己組織化反応の研究と、これによるシリコン基板表面での生体機能の創成の研究をスタートした。各項目ごとに研究実績を報告する。 (1)放射光励起反応のSTMその場観察について、励起エネルギー依存性を調べるための専用アンジュレータビームラインとSTM装置の製作を進めた。STM装置の立ち上げを終了し、ビームラインについては設計をほぼ完了した。さらに、放射光エッチングにより微細構造を形成するための専用ビームラインを完成し、SiO2/si(100)基盤のエッチングを行い、最先端のプラズマエッチングと比較し、約一桁平坦度の良いエッチングが簡単に出来ることを見出した。オングストロームレベルの平坦度と高い清浄度が要求される生体物質堆積用基板の加工に極めて適しているエッチング技術であることを確認した。 (2)埋め込み金属層を用いた赤外反射吸収分光(BML-IRRAS)技術の開発の一環として、BML基板をウエハーボンディングにより製作することを試みた。ウエハーボンディングに成功し基板を試作した。今後IRRAS測定に応用し性能を評価する予定である。 (3)SI(100)基板を水素終端し、その表面に各種の自己組織アルキル単分子膜を形成し、BML-IRRASにより評価した。シリコン基板表面の凹凸の程度の増大とともにCH2伸縮振動ピークがシフトすることを見出した。一方、表面粗さが一定の場合は被服率が変わってもピーク位置が変わらないことから、膜の成長が島状成長機構によっていると結論した。 (4)Si(100)の完全な水素終端表面を得る条件を見出すとともに、この表面の水分子との反応をBML-IRRASにより調べた。3x1終端面は反応しにくいのに対し、2x1表面は容易に反応し、酸化が進むことを見出した。また、完全終端の条件においても、水素原子がSiバルクに容易に拡散し、SiH伸縮振動の線幅が広がることを見出した。
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