放射光エッチング反応の励起エネルギー依存性測定技術とこの反応を利用したナノ加工技術の開拓、およびその素性の良い応用の開拓を目標として研究をすすめ、以下の成果を得た。 (1)STM専用アンジュレータビームラインの建設と応用 分子研UVSORの高度化改造工事に歩調をあわせ、ビームライン7UにSTM測定専用のアンジュレータビームラインと、実験ステーションとしての超高真空STM装置の設計と製作を進め平成15年度に完成した。水素終端Si(111)表面にアンジュレータ光を照射し、Si-H結合の切断を観測した。 (2)生体ナノ反応場の製作の発案から分子による情報伝逮-分子通信-の新概念の提案。 放射光エッチングで微細加工を施したSi表面に、脂質二重膜とチャンネルタンパク質を集積した、サポーテッドメンブレンバイオセンサーを発案し、この素子を製作するのに必要な多くの要素技術:シリコン表面のナノ加工、表面の-CH_3化や-COOH化などの領域選択的化学修飾、ベシクルフユージョンによる脂質二重膜の堆積など、の開発をほぼ完了した。本センサーは、分子を情報伝達媒体とする生体内情報伝達系の受信素子とみなせる事から、"分子通信"という新しい学術分野の重要性を提案した。 (3)埋め込み金属層基板を用いた赤外反射吸収分光(BML-IRRAS)技術の開拓と応用。 シリコン表面での水素と水の反応の観測にBML-IRRASを応用し、酸化の度合いの異なる色々なSiH_2に帰属される3対の二重項バンドを発見し、BML-IRRASの特徴:指紋領域を含む広い周波数範囲での、高感度高分解能、基板表面に垂直な遷移則、などを初めて明瞭に実証した。Si表面に固定化したタンパク質のBML-IRRAS測定により生体物質測定に特に有用であることを確認した。
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