研究概要 |
B-ブロモ-N,N′-ジトシル-1,2,3-ジアザボロリジンを触媒として、ニトロエタン中で、ジヒドロシンナムアルデヒドとケテンシリルアセタールを用いてアルドール反応を行うと、低収率ながら40%eeで不斉反応が進行した。このボランを重ジクロロメタン中で^<11>B NMRを測定したところ、BBr_4^-の存在に係わるピークが検出された。これは対イオンとしてB^+の存在を示唆する。一連のこのボラン種を用いる化学反応は詳細に検討されている。 ボロニウムイオンは中性3価のボランから配位子(通常ハロゲン)を一ツ引きぬくことにより生じる二ツの空軌道を持つ2価の化学種である。しかし、その高い電子要求度から容易に配位性溶媒を受け入れ、実際には3配位もしくは4配位の状態である可能性がある。 今回、構造についての疑問が残っている古典的なジフェニルボロニウムパークロレートの構造に係わる研究を行った。 非経験的分子軌道計算(GIAO-HF/6-311+G(d,p)//B3LYP/6-31+G(d))により、構造の最適化後,^<11>B化学シフト計算によって、このボロニウムイオンの^<11>B化学シフトが47.02ppmであると計算された。一方、重ニトロメタン中での^<11>B NMRによる実測値は46.02ppmであった。これらの計算値と実測値のきわめて良い一致は、計算により最適化された構造が適切なこのボロニウムイオンの構造に対応すると考えられる。 このことから、ジフェニルボロニウムイオンは以前指適されていたような完全に解離したイオン種ではなく、B-O結合はイオン性を含む共有結合とみなすことができる。この化学種を用いる有機化学反応も現在検討中である。
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