研究概要 |
古典的ボロンカチオンの原型とされていたジフェニルボロンパークロレートがB-O間でイオン性を持つ共有結合であることが^<11>BNMRと非経験的分子軌道法計算により判明した。この化学種の反応化学が検討され、非常に興味深い挙動が明らかとなった。この化学種は単なるルイス酸として働くことなく、アルデヒドの自己縮合をきわめてスムースに進行させた。はじめアルデヒドに配位レパークロレート部位によりα-水素引きぬきが起こり、ボロンエノレートが形成され、続いて第2のアルデヒド配位によりアルドール反応が進行した。この触媒機構は酸-塩基複合作用とみなされる。α-水素を持たないアルデヒドとの間では交差アルドール反応が進行する。(1R,2R)-(+)-1,2-Diphenylethylenediamineのジトシレート化物とBB_<r3>から調製されるB-Br錯体はニトロ系溶媒中、それ自身溶媒和したボロンカチオンであることが、詳細な^<11>B-NMRの検討からはじめて明らかにされた。このスペクトルはB-Nの窒素核四重極モーメントによりブロードな吸収として0ppm付近にあらわれる。この化学種は会合した集合体であると推定される。AgClO_4の添加により、ピークの位置はそれほど移動しないが、excess ClO_4^-イオンにより、あらたに19ppm付近にClO_4^-がボロンカチオンに再結合した化学種が生じることも確認した。この化学種による反応も検討された。ステップワイズな反応では低収率であった。これは反応中間体がボロンカチオンによってトラップされるためである。一方、協奏的反応は高収率で進行した。現在、関連化学種による不斉反応の検討を行っている。あわせて、物理有機化学的研究によるボロンカチオン種の研究を継続中である。
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