研究概要 |
合成化学的研究としては、主に(R, R)-Stienを用いてBBr_3との反応で得られる環状B-Brボラン化合物からのボロンカチオン種発生の詳細な検討を行った。従来および昨年度までの研究でB-BrからB^+Br^-となっていると考えられていた化学種がかならずしもボロンカチオン種ではなかったという結果を得た。そこで、Ag^+BPh_4^-による確実なボロンカチオン化を行い、その発生に成功した。しかしながら、DanishefskyジエンとアルデヒドとのヘテロDiels-AIder反応に利用したが十分な不斉を観測するにはいたらなかった。また仮定される2つの空軌道の制御が非常に困難で、その親電子性が非常に高くこの種を触媒としてまわすことの困難なことも判った。 ^<11>BNMRおよび計算化学的研究では、室温でのさまざまなタイプのボロンカチオン種の発生を試みたが完全にフリーのボロンカチオン種の発生は困難であることが判った。Abinitio計算からボロンカチオン(2価)のLUMO軌道のエネルギー準位が非常に高く不安定であることが示唆された。したがって、溶液中では溶媒和された4価の状態でしか存在しないと推論された。 新しい研究として物理有機化学的手法でのボロンカチオン種の存在の検討を開始した。ジフェニルボロントリフレートからボロンカチオン種の発生をレーザー光分解法で詳細に調べた。世界ではじめて溶液内でボロンカチオンが発生したとする証拠を得ることができた。
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