研究概要 |
平成12年度に採集した卵塊からの卵の孵化率を調べ、孵化率が約50%のものを雄の胚が死んだmale-killingの卵塊と推定した。これらのmale-killingと推定される卵塊から孵化した幼虫を飼育して成虫の性比を確認した後、正常雄と交配して産卵させ次世代を得た。孵化率が約50%の卵塊は全国各地にあったが、飼育後の成虫が雌ばかりになるものは北海道三笠市と北海道河東郡鹿追町で採集した卵塊のみであった。male-killing個体は、今のところ北海道のみに分布していると考えざるを得ない。 性比1:1の卵塊から孵化した幼虫(2頭)と、成虫が雌のみになった卵塊から孵化した幼虫(8頭)のmtDNAハプロタイプをBogdanowicz, Schaefer & Harrison(2000)に基づいて分析した。調べた遺伝子は、cytochrome c oxidase I(COI)とcytochrome c oxidase II(COII)、NADH dehydrogenase subunit I(NDI)の3種類である。正常性比の卵塊から孵化した幼虫は北海道タイプのハプロタイプであり、雌のみの卵塊(male-killing)から孵化した幼虫は北海道と本州を含むアジアに広く分布するハプロタイプであった。 male-killingの原因として、細胞質に共生する種々の細菌が報告されている。そこで、細菌universal, Wolbachia, Rickettsia, Spiroplasma, ArsenophonusのプライマーセットでのPCRを行い共生細菌の有無を調べた。しかし、いずれのプライマーセットでのPCRも陰性であり、共生細菌によるmale-killingではなく、新しいタイプのものであることが予想された。
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