研究課題/領域番号 |
12440220
|
研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
東浦 康友 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (60322492)
|
研究分担者 |
原 秀穂 北海道立林業試験場, 病虫科長
石原 通雄 兵庫医科大学, 生物学教室, 助教授 (50068491)
山形 秀夫 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (20023468)
|
キーワード | マイマイガ / 性比異常雌 / male-killing / mtDNA / ハプロタイプ / 共生細菌 / 亜種間交配 / 進化 |
研究概要 |
雄の子が死亡し、子が雌ばかりになる性比異常雌と正常雌のmtDNAハプロタイプをCOIとCOII、ND1の3つの遺伝子、1,075塩基について調べたところ、正常雌はすべて北海道型のハプロタイプであったが、性比異常雌はこれとは17塩基も異なる、本州やアジアに広く分布するハプロタイプであることが判明した。つまり、本州の雌が何らかの原因で北海道へ侵入し、代々北海道の雄と交配し続けることによって性比異常雌となっている可能性が考えられる。正にこれと同じ交配をGoldschmidt(1930)がマイマイガで行っており、本州各地の雌と北海道雄を掛け合わせたF_1の雌と、北海道雄を交配すれば雄は孵化せず、子は雌ばかりになることを示していることを文献的に明らかにした。マイマイガは北海道とそれ以外の日本では亜種が異なる。マイマイガで性比異常雌が出現する機構が、亜種間の交雑に起因するという、これまで想定されてこなかった新しい機構である可能性が濃厚になった。 さらに、北海道各地の個体群でmtDNAのハプロタイプを分析したところ、渡島半島方面の個体はすべて本州・アジア型で、北海道型は1頭もいなかった。これらの分布境界がどの辺りにあるかは今後研究を進めなければならないが、渡島半島方面の雌が北海道中央部に分布して周辺の雄と交配した結果が性比異常雌となることも十分予想される。したがって、性比異常雌が北海道中央部で繰り返している生活は、亜種間の交配による遺伝子流入であり、今後の進化の起点となることも考えられる。 以上のように、これまで細胞質共生細菌による例が多く報告されてきた性比異常雌の機構に、まったく新しい機構の可能性を提出することが出来た。
|