研究課題/領域番号 |
12440220
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研究種目 |
基盤研究(B)
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配分区分 | 補助金 |
応募区分 | 一般 |
研究分野 |
生態
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研究機関 | 東京薬科大学 |
研究代表者 |
東浦 康友 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (60322492)
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研究分担者 |
原 秀穂 北海道立林業試験場, 病虫科長
石原 通雄 兵庫医科大学, 生物学教室, 助教授 (50068491)
山形 秀夫 東京薬科大学, 生命科学部, 教授 (20023468)
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研究期間 (年度) |
2000 – 2002
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キーワード | マイマイガ / 性比異常雌 / male-killing / ミトコンドリアDNA / mtDNA / ハプロタイプ / 共生細菌 |
研究概要 |
北海道美唄市のマイマイガ(Lymantria dispar L.)で、子供が全部雌になる性比異常雌を発見し、この性質が母性遺伝することを確認した。正常雌の卵の孵化率は約100%だが、異常雌は約50%であることから、雄の子が孵化前に死亡し雌の子だけが残ると考えられる。他の昆虫では性比異常を起こす原因としてWolbachia属等の細菌等が知られているが、16S rDNAを用いた分析によっては、マイマイガではこれらの細菌は検出できず、細胞内共生細菌が原因ではない。 性比異常雌と正常雌のミトコンドリアDNA(mtDNA)ハプロタイプをCOIとCOII、ND1の3つの遺伝子、1,075塩基について調べたところ、正常雌はすべて北海道型のハプロタイプであったが、性比異常雌はこれとは17塩基も異なる、本州やアジアに広く分布するハプロタイプであった。つまり、本州の雌が何らかの原因で北海道へ侵入し、代々北海道の雄と交配し続けることによって性比異常雌となっている可能性ある。これと同じ交配をGoldschmidt(1930)がマイマイガで行っており、本州各地の雌と北海道雄を掛け合わせたF_1の雌と、北海道雄を交配すれば雄は孵化せず、子は雌ばかりになることを示している。つまり、マイマイガで性比異常雌が出現する機構は亜種間の交雑に起因するという、これまで想定されてこなかった新しい機構である可能性が高い。 日本各地で性比異常雌が出現する個体群を調査したところ、北海道の石狩低地帯以東であった。そこで、北海道各地の個体群のmtDNAハプロタイプを調べたところ、石狩低地帯以西の個体群はすべて本州・アジア型のハプロタイプであり、石狩低地帯以東の個体群はすべて北海道型のハプロタィプであった。したがって、石狩低地帯以西の雌が以東の雄と交配し続けることによって性比異常雌となっている可能性が考えられる。
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