研究概要 |
我々は光合成原核生物のシアノバクテリアAnabaenaからアデニル酸シクラーゼ遺伝子cyaを単離し、その塩基配列からアミノ酸の一次構造を解析した。ラン藻のcyaの触媒領域は大腸菌などのcyaのそれとは構造が全く異なっており、むしろヒトやウシなどのほ乳類と強い相同性を示した。その後、他のラン藻からcyaの単離を試み、糸状性ラン藻のSpirulinaやAnabaena PCC7120から合計8コのcya遺伝子を単離した。それら遺伝子の塩基配列から推定される酵素タンパク質の一次構造はその触媒領域において互いに良く似ており、ラン藻のcyaは大きな遺伝子ファミリーを形づくっていることが明らかとなった。酵素の触媒領域はC-末端側にあり、そこからN-末端側に向けてそれぞれのCyaは特徴的な構造を持つ。その中で、CyaGは、一回膜貫通型タンパク質に特徴的なアミノ酸配列を持ち、かつタンパク質の二量化に必要とされるアミノ酸配列を備えている。すなわち分子全体としてのドメイン構造はACよりはむしろグアニル酸シクラーゼに似ている。しかしながら、触媒領域の構造はあくまでACであり、実際、大腸菌を用いて作った組み換え型タンパク質はAC活性を示し、GC活性は全く示さない。そこで我々は触媒領域の中でもGCに共通して保存されている3つのアミノ酸(E,R,C)に着目し、CyaGの触媒領域の反応部位に含まれるK,I,DをそれぞれE,R,Cに変換した組み換え型タンパク質を合成した。このタンパク質はGC活性を示し、AC活性は示さなかった。すなわちタンパク質のアミノ酸を3つ変えることにより基質特異性を変えることに成功した。
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