研究概要 |
Bruguiera sexangulaの培養細胞系を用いて,cDNAライブラリーを構築し,大腸菌を用いた機能スクリーニング法により耐塩性に関与する遺伝子の探索を行った。そして大腸菌の耐塩性を向上させる256アミノ酸からなるタンパク質をコードする遺伝子の単離に成功し,このタンパク質を「mangrin」(特許願 第235910号)と命名した。本研究ではmangrinの耐塩性強化機構の解析の第一歩として最小機能領域を決定するために,Mangrin cDNAのデリーションクローンを大腸菌に導入し,その耐塩性を評価した結果,mangrinの16-86番目のアミノ酸領域がmangrinが耐塩性強化機能を維持するために必要な領域であることが明らかになった。また,Mangrin cDNAを導入した酵母は耐塩性が強化され,1.2 M NaClを含む培地でも通常の培地での生育と同等の生育を示した。さらに,Mangrin cDNAを導入したタバコ培養細胞でも,150mMのNaClを加えた培地で13日間培養したときの新鮮重量がmangrinを導入していないものに比べ上昇し,耐塩性の向上が明らかになった。Mangrinを導入したタバコ植物体を150 mM NaClを含む寒天培地で育成させると,mangrinを導入していないものに比べ,葉や茎の生長だけでなく,発根状態にも顕著な差が見られた。これらのことからmangrinが原核生物だけでなく,酵母やタバコ培養細胞及び植物体などの真核生物においても耐塩性強化機能を有することが明らかになった。またタンパク質レベルでの実験を行うため,大腸菌で発現させたmangrinを精製し,これを用いて抗mangrin抗体を作成した。
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