研究概要 |
塩生植物は、沿岸域や砂漠化した塩性土壌等の過酷な自然環境で生育する能力を有する。この事から塩生植物は進化の過程で通常の植物とは異なる多彩な環境ストレス耐性機構を獲得してきたと考えられる。よって、その遺伝子(cDNA)は植物の環境ストレス耐性を向上させるための重要な遺伝子資源と言える。本研究では環境ストレス耐性植物として、マングローブ植物(Bruguiera sexangula, Avicenia marina)、アカザ科植物(Suaeda japonica, Salsola komarovii)、そしてアイスプラント(Mesembryanthemum crystallinum)に着目し、大腸菌を用いた機能スクリーニング法で「環境ストレス耐性因子遺伝子」の探索を試みた。塩ストレス耐性に関与する遺伝子を探索した結果、大別して、浸透圧調節物質の合成系タンパク質(phosphoehanolamine N-methyl transferase)、シャペロニン等のヒートショックタンパク質(TCP-1)、イオン輸送タンパク質(H+ATP ase)、LEAタンパク等がコードされていると考えられるcDNAの他、上記の分類に属さない機能未知のタンパク質が多数得られた。特にBruguiera sexangulaから発見した新規耐塩性強化因子mangrinを発現した大腸菌は耐塩性の他、浸透圧耐性、耐熱性、凍結耐性が向上していることも確認された。さらに、マングリンcDNAを導入した酵母やタバコは耐塩性が向上していることが明らかになった。本研究ではその分子機構を解明するためにマングリンcDNAのデリーションクローンを作成し、その機能領域を解析した。その結果、N末端側の70アミノ酸からなる領域がマングリンが持つストレス耐性強化機能に対し、重要な役割を担っていることが明らかになった。
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