研究概要 |
マングローブ等の「環境ストレス耐性植物」は進化の過程で、通常の植物とは異なる多彩な環境ストレス耐性機構を獲得し、現在に至ったと考えられる。よって、その遺伝子は植物の環境ストレス耐性を向上させるための重要な遺伝子資源と言える。本研究では環境ストレス耐性植物として、マングローブ植物(Bruguiera sexangula, Avicenia marina)、アカザ科植物(Suaeda japonica, Salsola komarovii)、そしてアイスプラント(Mesembryanthemum crystallinum)に着目し、大腸菌を用いた機能スクリーニング法で「環境ストレス耐性因子遺伝子」の探索を試みた。1次スクリーニングで約2000cDNAを導入した大腸菌に耐塩性の向上が認められたが、このうち、安定したストレス耐性強化機能を有するものは64cDNAであった。これらの塩基配列を解析した結果、大別して、浸透圧調節物質の合成系タンパク質(phosphoehanolamine N-methyl transferase)、シャペロニン等のヒートショックタンパク質(TCP-1)、イオン輸送タンパク質(H+ATP ase)、LEAタンパク等がコードされていると考えられるcDNAの他、上記の分類に属さない機能未知のタンパク質が多数得られた。特にBruguiera sexangulaから発見した新規耐塩性強化因子mangrinを発現した大腸菌は耐塩性の他、浸透圧耐性、耐熱性、凍結耐性が向上していることも確認された。マングリンcDNAを導入した酵母や大腸菌にも大腸菌で得られた結果と同様な効果が確認された。さらに、本研究ではマングリンの他、TCP-1についても詳細な機能解析を行い、TCP-1がモノマーの状態でも分子シャペロンの機能を有することを明らかにした。
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