研究概要 |
耐塩機構の解明を目的として,モデル植物シロイヌナズナを用い耐塩性光合成育成突然変異系統pst(photoautotrohic salt tolerance)の解析を進めた.pst2においては,Na^+排出による耐塩機構の可能性が示唆されていたため,細胞膜Na^+/H^+アンチポーターの発現を解析したが,RNAレベルでの顕著な差は見られなかった.また,Na^+およびK^+の個体内蓄積量においても有意差は認められなかった.さらに遺伝子座の解析において,シロイヌナズナ個体が耐塩性であることの判定が容易ではなく,変異遺伝子座の特定には困難を伴った. そこでモデル植物の利点を活かし,遺伝子発現レベルを包括的に理解するため,pst2およぴ野生系統に対してcDNAマクロアレイ(外注13,000ESTクローンPCR産物スポット)およびオリゴマイクロアレイ(Agilent製14,000遺伝子合成60merオリゴスポット)を行った.さらに両アレイの精度を評価するため,リアルタイムPCRを用いてRNAを定量した.cDNAマクロアレイでは野生系統に対してpst2での発現が減少しているが,オリゴマイクロアレイでは野生系統とpst2の間に差がない遺伝子については,リアルタイムPCRにおいて差が見られなかった.したがって,cDNAマクロアレイよりもオリゴマイクロアレイの方が信頼性が高いことが示された.しかし,オリゴマイクロアレイで野生系統に対してpst2での発現が最も増加していた遺伝子と,最も減少していた遺伝子は,共にリアルタイムPCRでは増幅が悪く,定量できなかった.これは対象遺伝子の発現量が低く,したがって,オリゴマイクロアレイにおいては発現している相同配列遺伝子とのクロスハイブリが起こったためと考えられた.
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