研究課題/領域番号 |
12440236
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研究機関 | 北海道大学 |
研究代表者 |
下澤 楯夫 北海道大学, 電子科学研究所, 教授 (10091464)
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研究分担者 |
馬場 欣哉 富山大学, 工学部, 講師 (30238232)
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キーワード | 機械感覚 / 昆虫 / 感覚細胞 / 刺激受容 / 初期過程 / エネルギー変換 / ブラウン運動 / 熱揺動スペクトル |
研究概要 |
昆虫機械感覚細胞は、常温の熱揺動エネルギーk_BT(【approximately equal】4×10^<-21>Joul、可視光フォトンのエネルギーの1/100)をも検出できる最高度に進化した刺激受容系である。にもかかわらず、機械エネルギーが感覚細胞の受容器電位に変換される仕組み、特にその初期過程は全く解明されていない。この未知の刺激受容機構の初期過程を明らかにするため、コオロギ気流感覚毛の熱揺動(ブラウン運動)を光学的に計測し、感覚細胞に薬物を与えて、感覚細胞の力学的性質の生物活性依存性を測る。 気流感覚毛のブラウン運動を測定して、そのパワースペクトルをもとめると、受容部の機械的性質を推定できる。各種のTubulin重合阻害剤、カルシウムキレート剤、カルシウムイオノフォア、脱共役剤やCNなどのATP供給阻害剤で刺激受容過程を撹乱したときのパワースペクトルへの効果から、刺激受容部位におけるエネルギー変換は、気流感覚器の機械模型のバネと抵抗の変化としてとして検出できる。これまでの計測から、感覚細胞の閾値で感覚細胞に吸収される機械エネルギーは常温のk_BT(【approximately equal】4×10^<-21>J)であること、その際の感覚毛先端のブラウン運動変位は10nm程度であることが分かっている。 初年度の計画通り、設備備品費、消耗品費の光学部品と電子部品、謝金を用いて顕微鏡を改造し、感覚毛のレーザー照明強拡大(900倍)像を4分割受光素子上に結ばせて、感覚毛のブラウン運動を計測する装置を作った。現在、完成した測定装置をピエゾ素子を用いて較正しながら、その性能を評価する作業を行っている。その結果、光学系および電子回路を含めた設計上の分解能は1nmであるが、実際には3nm程度の雑音幅を持っており、分解能が不足していることが明らかになった。その主な原因は光学系の除振不足と、測定光路の熱的な変形やかげろう効果による光学的ゆらぎ雑音があるためとみられている。現在、光学系の機械強度を増す設計変更と、かげろう効果減少のための熱歪の解消策を施して、性能向上を図っている。
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