研究概要 |
アブラムシ細胞内共生細菌ブフネラのゲノム解析によって583個のORFが同定されたが,そのうちこれまで未知であり,ブフネラ特異的と思われる遺伝子はわずか4個であった.そこで,今年度は主としてこれらの遺伝子(yba1〜4)の発現と機能予測に関する実験を行い,以下の結果を得た. 1.RT-PCRによって,yba1〜4は何れも実際に発現されていることが明らかになった. 2.Northern hybridizationの結果から,yba1は上流および下流の数個の遺伝子とともに単一のオペロンとして転写されることがわかった. 3.同じく,yba3および4は単一オペロンとして転写されていることがわかった. 4.5'RACE法によってyba1〜4の転写開始点をそれぞれ確定した. 5.アブラムシの腸内細菌の1つErwinia aphidicolaがyba1のホモログをもつことが示唆され,この腸内細菌とブフネラの単系統性についてさらなる証拠が得られた. 6.yba1は鞭毛関連遺伝子とともに単一オペロンを形成していることからみて,鞭毛装置にブフネラ特異的機能を与えるタンパク質をコードしている可能性が示唆された. 7.最近のゲノム解析によって,yba2と低い相同性をもつ遺伝子がそれぞれ植物および動物病原菌であるXylellaおよびPseudomonasに見いだされた. 8.アブラムシの体内において,ブフネラは菌細胞だけでなく,体液を介して他の組織にも移行していることが示唆された.
|