研究概要 |
翅多型性に関する遣伝子としては,アリにおいてWg,Sal,およびSdなど数種類が知られているが,前年度に実施したこれらの塩基配列に基づく重複プライマーを用いたPCRでは,アブラムシのゲノム中にこれらに対応する遣伝子を検出できなかった.そこで,今年度は次のように,アリの翅遣伝子断片をプローブとしたサザーンブロッティングによってアブラムシ翅遺伝子を検出し,さらにそれらの発現を調べる実験を行った. 1.アリから得た上記3種類の遺伝子を鋳型として,PCR法によってDIG標識のプローブを作製した. 2.アブラムシのゲノムDNAのEcoRlダイジェストから上記プローブによって翅遺伝子を検出し,それらを同定した. 3.各発生段階のアブラムシから得たRNAと翅遣伝子断片を用いたリアルタィム定量PCR法により,アブラムシ翅遺伝子の発現を探った. 4.その結果,将来無翅型になるか,有翅型になるかで,出生直後から翅遺伝子の発現に違いのある傾向がみられた. 5.アクチンcDNAの保存配列をプライマーに用いて,アブラムシ・アクチンcDNAを単離し,その塩基配列を明らかにした.その結果,ブフネラ細胞内に見いだされるアクチン分子種は,昆虫自身の細胞質アクチンとは異なるものである可能性が示唆された.
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