研究概要 |
研究代表者の研究室で継代培養していた生物の一つがストラメノパイルの最も原始的な仲間の一つである生物である可能性が高いことが明らかになり,微細構造と分子系統による解析を行った。この生物はWobblia属の名前で論文として公表した。 Wobbliaが最も原始的なストラメノパイルの一つだとすると,黄色植物がもつ多くの形態的特徴はストラメノパイルの進化の初期から保持されてきたことになる。 Wobbliaの性質を手がかりに,他のストラメノパイル生物の探索を行い,ビコソエカ類に類似するが,Wobblia属に系統的には近縁な生物を発見することができた。この生物について現在解析を行っており,Wobbliaとの関係を含めて発表の予定である。 本研究の準備期間に確立した黄色植物の微細構造解析と分子系統解析から,黄色植物には未知の系統群が存在していることが明らかになった。この生物群は形態的には多様であるが,共同研究者の研究によれば,DHAやEPAなどの高度不飽和脂肪酸を多量に含んでいるという共通点をもっている。単系統を形成し,他の黄色植物から明瞭に区別できるこの仲間をPinguiophyceaeの名前で新たな綱として記載する作業を進めている。綱の名前は油を多く含むという意味である。このほか,葉緑体をもたないストラメノパイルの分離,培養,微細構造解析,分子系統解析の作業を進めている。葉緑体をもたないストラメノパイルの中には,二次的に葉緑体を失ったものが含まれている可能性が高く,このことを分子レベル,形態レベルで解析中である。このことが明らかになれば,光合成能の消失が無色ストラメノパイルの創生に関わっていた可能性が出てくると考えられる。
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