研究概要 |
昨年度はストラメノパイルの最も原始的な仲間の一つである生物である可能性が高いWobblia属を論文として公表したが,その後の研究でWobbliaにもっとも近縁な生物を発見した。この生物は微細構造上の特徴に加えて,分枝系統樹の上でもWobbliaと単系統群を構成した。これら2つのストラメノパイルは他の無色ストラメノパイル群から独立した生物群と認識することが妥当と考え,ストラメノパイルの新たな網として記載し,論文として投稿した。解析を進めていたピコプランクトンを中心とする未知の黄色植物群については,Pinguiophyceaeの名前で新たな網として記載した。これにより,黄色植物は10〜11網からなる巨大な植物群として認識されることになる。このほか,葉緑体をもたないストラメノパイルの分離,培養,微細構造解析,分子系統解析の作業を進めた結果,葉緑体をもたないストラメノパイルの中でPteridomonas,Ciliophrysには葉緑体コード遺伝子であるrbcLがほぼインタクトの状態で存在することが確認された。Pteridomonasでは葉緑体は核外膜とつながった構造として痕跡的に存在していることも確認できた。これは黄色植物においてはじめての発見であり,論文として投稿中である。今回の研究で,黄色植物では複数の系統において光合成能の二次的な消失が生じたことが明らかになった。またこれらの痕跡的な葉緑体においてはルビスコが発現している可能性がでてきた。もし発現していれば,このルビスコはどんな役割を果たしているのか?このことを明らかにすることはストラメノパイルの多様化について新たな視点で研究を進める上で重要な手がかりになると考える。
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