研究概要 |
本年度は最終年度であるので,研究成果をとりまとめ,できるだけ論文として公表することを目標とした。 1.ストラメノパイルの原始的な系統の一つであるが,他のストラメノパイルから独立したクレードを形成することが明らかになったWobblia属とPlacidiaをまとめて新綱Placidea(=Placidiophyceae)を公表した。この生物群の解析と既知のストラメノパイルの細胞構造との比較から,不等毛植物のもつ細胞の基本構造(鞭毛装置の構成,鞭毛根3番による食作用など)はストラメノパイルの進化の初期から存在していたことが示された。2.ストラメノパイルの藻類要素の新たな一員として新綱ピングイオ藻綱Pinguiophyceaeを設立した。3.光合成能をもたないPteridomonas, Ciliophrysは葉緑体コード遺伝子であるrbcLをインタクトの状態で存在すること,Pteridomonasでは葉緑体は核外膜とつながった構造として痕跡的に存在していることを確認し,論文として公表した。4.不等毛植物のディクティオカ藻綱の解析を行ない,ペディネラ属,リゾクロムリナ目,シリオフリス目の分類上の整理を行い,一部を論文として公表した。 このほか,ディクティオカ藻綱の原始的なグループと目されるアメーバ状の藻類を発見し,スルコクリシス目として記載準備中である。また,2本鞭毛をもつリゾクロムリナ目の藻類を発見し,生活環の解析からこの藻群における形質進化を論じる論文を準備している。以上のように,プラシディア綱や不等毛植物に関する知見を総合することで,ストラメノパイルの主要なクレードで生じた形質変化について論議できるようになった。上記以外にも,本研究の過程で,分類上の位置が不明なストラメノパイルの培養株を複数確立しており,さらに解析を継続する予定である。
|