研究概要 |
平成12-14年度の3年間で、以下の研究成果をあげた。 1.ストラメノパイルの原始的な系統の一つであるが,他のストラメノパイルから独立したクレードを形成することが明らかになったWobblia属とPlacidiaをまとめて新綱Placidea(=Placidiophyceae)を公表した。この生物群の解析と既知のストラメノパイルの細胞構造との比較から,不等毛植物のもつ細胞の基本構造(鞭毛装置の構成,鞭毛根3番による食作用など)はストラメノパイルの進化の初期から存在していたことが示された。 2.ストラメノパイルの新たな一員として新綱ピングイオ藻綱Pinguiophyceaeを設立した。この藻群は高度不飽和脂肪酸を大量に蓄積することで特徴づけられる。 3.光合成能をもたないPteridomonas, Ciliophrysは葉緑体コード遺伝子であるrbcLをインタクトの状態で存在すること,Pteridomonasでは葉緑体は核外膜とつながった構造として痕跡的に存在していることを確認した。 4.不等毛植物のディクティオカ藻綱の解析を行ない,ペディネラ属,リゾクロムリナ目,シリオフリス目の整理を行った。特に、ペディネラ目については、これまで報告されたすべての形質の再評価を行い、分類系の整理を行った。 5.ディクティオカ藻綱の原始的なグループと目されるアメーバ状の藻類を発見した。この生物は、所属不明のストラメノパイルとして知られるSulcochrysisと単系統を形成した。両者をスルコクリシス目として記載準備中である。 6.2本鞭毛をもつリゾクロムリナ目藻類の生活環の解析から、本藻綱では、2本鞭毛をもつ祖先種から後鞭毛の退化、鞭毛装置の退化が進んだとの結論を得た。 以上の知見を総合することで,ストラメノパイルの主要なクレードで生じた形質変化について論議できるようになった。
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