北半球における高等ハエ類の多様性および系統関係に関する研究

2001 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12440241
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 嶌 洪 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (70038280)
• 研究分担者: 倉橋 弘 国立感染症研究所, 昆虫医科学部, 室長 (00100074) ; 篠永 哲 東京医科歯科大学, 医学部, 助教授 (00013938)
• キーワード: 高等ハエ類 / 系統分類 / 全北区 / ヤドリバエ科 / ニクバエ科 / クロバエ科 / インベントリー

研究概要

1.平成13年7月16〜25日にかけて、代表者嶌が研究協力者2名とともに東北地方でヤドリバエ科についての野外調査を行った。この結果、Panzeria属をはじめとして北米と共通するものが多く得られ、今後の検討のための資料を蓄積できた。
2.平成13年9月23日〜10月8日の間、代表者の嶌および分担者の篠永と倉橋、海外分担研究者のT.Papeがカナダ農務省中央研究所を訪問し、同研究所の海外分担研究者D.M.WoodおよびJ.O'Haraとともに同研究所所蔵の北米産標本を中心に調査・検討を行った。また嶌とPapeはこの間アメリカ合衆国ワシントンDCの国立自然史博物館を訪問し、所蔵標本の調査・検討を行った。この結果、ヤドリバエ科では微少卵生のグループの中に、北米とユーラシアで別属とされているものに非常に近縁な数属が発見され、今後これらの属の取扱いを集中的に検討する必要性が判明した。また、従来いくつかの族に分散して所属させられていた属が、Polideini族にまとめられ、本族が主に新大陸で繁栄していることが明確となった。クロバエ科では、熱帯・亜熱帯で繁栄しているChrysomya属は、北米とユーラシアでは系統の異なるものであることが考えられ、さらに調査をすすめる必要性が明かとなった。ニクバエ科は、北半球において寄生性の種が大きな放散をとげており、これらの整理を進めた。イエバエ科はカトリバエを中心に北半球の種の整理を行った。
3.世界中に広く分布するCompsilura属の寄生様式について実験・観察を行った結果、これまで知られていなかった寄生部位、呼吸方法等が明らかになり、北米、ヨーロッパに分布するBlondeliaやVibrissina属も同様の生活方法をとり、形態的にも非常に類似していることから、これらの属の進化や系統関係について考察する鍵が得られた。

研究成果

• [文献書誌] Tachi, T., H.Shima: "Taxonomic study of the genus Ceromya Robineau-Desvoidy of Japan (Diptera : Tachinidae)"Beitrage zur Entomologie. 50(1). 129-150 (2000)
• [文献書誌] Nakayama, H., H.Shima: "A new species of the genus Hypocera Lioy from Asia (Diptera : Phoridae)"Entomological Science. 4(3). 379-386 (2001)
• [文献書誌] Shinonaga, S., H.Kurahashi: "Two new species of the tribe Hydrotaini from Indonesia (Diptera : Muscidae)"Medical Entomology and Zoology. 53(1)(in press). (2002)
• [文献書誌] Kurahashi, H.: "Blow flies recorded from Sri Lanka, with descriptions of two new species (Diptera, Calliphoridae)"Japanese Journal of Systematic Entomology. 7(2). 241-254 (2001)
• [文献書誌] Kurahashi, H., L.Chowanadisal: "Blow flies (Insecta : Diptera : Calliphoridae) from Indochina"Species Diversity. 6. 185-242 (2001)
• [文献書誌] Kurahashi, H., F.R.Magpayo: "Blowflies (Insecta : Diptera : Calliphoridae) of the Philippines"Raffles Bulletin of Zoology. Suppl.9. 1-78 (2000)