北半球における高等ハエ類の多様性および系統関係に関する研究

2002 年度 実績報告書

• 研究課題/領域番号: 12440241
• 研究機関: 九州大学
• 研究代表者: 嶌 洪 九州大学, 大学院・比較社会文化研究院, 教授 (70038280)
• キーワード: 有弁ハエ類 / 系統分類 / 全北区 / 国際研究者交流 / カナダ;スウェーデン / インベントリー / 種多様性

研究概要

1.旧世界に広く分布し、有毒物質を体内に持つマダラガ科やマダラチョウ科などに選択的に寄生するSturmia属の中に、非常に類似した2種がいることが判明したので、新しく新種として記載発表した。
2.これまでヨーロッパから1種、中国から1種しか知られていなかったPhorinia属を再検討し、東アジアに少なくとも7種が生息することを確認し、記載発表の準備を進めている。
3.これまで分類研究が非常に遅れていたDexiini族について研究を進め、東アジアに12属83種を確認した。そのうち30種は未記載種である。これらについては近く発表の予定である。
4.研究協力者の篠永哲は、本研究の成果をもとに日本産イエバエ科の整理を進め、ほぼ全容について把握できたので、モノグラフとして発表した。
5.研究協力者の倉橋弘は、アジアとヨーロッパのクロバエについて模式標本の調査を含め標本を精査し、従来の分類体系を再検討している。
6.平成14年7月16日〜30日の間、研究代表者と上記2名の研究協力者および海外研究協力者、カナダのD.M.WoodとJ.E.O'Haraが、スウェーデンの海外研究協力者T.Papeのスウェーデン国立自然史博物館(ストックホルム)を訪問し、同博物館およびルンド博物館等に所蔵される高等ハエ類の模式標本の調査を行った。同時に、スウェーデン中部のStrovallenにおいて、ハエ類の生息状況の調査を行った。
7.10月1日〜6日にオーストラリアのプリスベンで開催された国際双翅学会議において、研究状況についての討論を行い、倉橋とO'Haraはそれぞれクロバエ科とヤドリバエ科についての研究発表を行った。
8.J.O'Haraはこれまでの研究成果に基づき、Polideini族を復活させ、全北区に分布するLyphaなどの属をこのグループに入れることを提唱した。

研究成果

• [文献書誌] Ichiki, R., H.Shima: "Immature life of Compsilura concinnata (Meigen) (Diptera : Tachinidae)"Annales of the Entomological Society of America. 96(2). 1-7 (2003)
• [文献書誌] Tachi, T., H.Shima: "Systematic Study of the genus Peribaea Robineau-Desvoidy"Tidjschrift voor Entomologie. 145. 115-144 (2002)
• [文献書誌] Shima, H., T.Tachi: "A new species of the genus Sturmia Robineau-Desvoidy (Diptera : Tachinidae) parasitic on the chestnut tiger butterfly in Japan"Entomological Science. 5(3). 297-304 (2002)
• [文献書誌] Shinonaga, S.: "Record of the muscid flies collected in Indonesia (Diptera, Muscidae)"Medical Entomology and Zoology. 53,suppl.. 181-212 (2002)
• [文献書誌] Shinonaga, S., H.Kurahashi: "Two new species of the tribe Hydrotaeini from Indonesia (Diptera : Muscidae)"Medical Entomology and Zoology. 53(1). 43-47 (2002)
• [文献書誌] O'Hara, J.: "Revision of the Polideini (Tachinidae) of America North of Mexico"Studia Dipterologica. Suppl.10. 1-170 (2002)
• [文献書誌] Shinonaga, S.: "A monograph of the Muscidae of Japan (日本のイエバエ科)"東海大学出版会. 341 (2003)