研究概要 |
1.本研究では、北半球に分布する高等ハエ類について、2名の研究分担者および3名の海外共同研究者とともに、高次分類の検討、既知種の確認、分布状態および生態的多様性の調査などを行った。 2.代表者の研究成果は次のようなものである。(1)旧世界に広く分布し、有毒物質を体内に持つマダラガ科やマダラチョウ科などに選択的に寄生するヤドリバエ科Sturmia属の中に、非常に類似した2種がいることが判明したので、新しく新種として記載発表した。(2)旧北区南部から大平洋地域に広く分布するDexiomimops属について再検討を行い、新たに7新種を確認し、本属が旧北区北部に分布するEriothrix属の南における代置属である可能性について論議した。(3)東アジア産のSiphonini族の分類学的再検討を行い、Peribaea,Ceromya,Actia属についてはその結果を発表した。(4)全世界に分布し、寄主選択範囲のもっとも広いノコキリハリバエの生態的特性を明らかにし、その生活し戦略上の意義を論じた。 3.研究分担者の篠永哲は、本研究の成果をもとに日本産イエバエ科の整理を進め、全容について把握できたので、分類学上のモノグラフとして発表した。 4.研究協力者の倉橋弘は、アジアとヨーロッパのクロバエについて模式標本の調査を含め標本を精査し、従来の分類体系を再検討し、近く発表の予定である。 5.海外共同研究者J.O'Haraはこれまでの研究成果に基づき、Polideini族を復活させ、全北区に分布するLyphaなどの属をこのグループに入れることを提唱した。 6.海外共同研究者T.Papeは、ニクバエ科の検討を行った。南アジアで腐敗臭をもつ花に特異的に引かれるグループについての分類学的な検討を行った結果、3新種が発見されたので公表している。
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