研究概要 |
本研究では、Si中に任意の周期でGe, C, Nの各原子層を配列し、共鳴トンネルダイオードに適用することにより、通常の不規則混晶材料では見られない新規物性の発現を制御・観測することを目指して研究を行なった。原子層周期ヘテロ構造を形成する研究を進めた結果、Ge(100)表面にSiH_3CH_3を導入すると一原子層のSiとCが自己制限的に形成されることを見いだした。また、500℃でのSiH_4反応により、C原子層形成Ge(100)表面ならびにN原子層形成Si(100)表面において、Siエピタキシャル成長が可能な条件を見いだした。それにより一層当りのN面密度が3×10^<14>cm^<-2>(約1/2原子層)に達するN原子層ドープSi単結晶を成長させることに世界で初めて成功し、厚さ1nmの中に原子密度10%を超える超高濃度Nドーピングが実現されていることを明らかにした。さらに、Si原子がN原子層を被覆してSi_3N_4構造形成を抑制することが高N原子密度化のために重要であるという指針を得た。また、Si/SiGe/Si(100)ヘテロ構造における熱処理時のSiとGeの相互拡散はGe比率が高いほど進行が早く、ヘテロ界面への面密度7×10^<13>cm^<-2>のC原子層ドーピングによりSi/Ge(100)ヘテロ界面での相互拡散は大きく抑制されることを明らかにし、原子オーダで急峻なヘテロ界面形成への指針を得た。さらに、Si-Ge系二重Si障壁共鳴トンネルダイオードの試作において、Si障壁への多層N原子層ドーピングを行なうことによりトンネル電流密度が著しく抑制される現象を見いだし、Si障壁の電子帯構造変調の可能性を示唆する結果を得た。以上のように、Si-N系及びSi-Ge-C系原子層積層による共鳴トンネルダイオード実現とその電子物性制御のための基盤技術の確立に必要不可欠となる大きな成果を得た。
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