研究課題/領域番号 |
12450003
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
花栗 哲郎 東京大学, 大学院・新領域創成科学研究科, 助教授 (40251326)
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研究分担者 |
前田 京剛 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (70183605)
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キーワード | 走査型トンネル顕微鏡 / 電界イオン顕微鏡 / NbSe_2 / 電子比熱係数 / 電荷密度波 / 磁束 |
研究概要 |
本年度は、走査型トンネル顕微鏡(STM)の更なる改良と、前年度作製に成功した超高純度NbSe_2の磁束状態における電子状態の比熱測定による検討を行った。 STMに関しては、前年度までに超高真空系や試料表面の準備、制御系に関してはほぼ完成していたものの、安定な原子像や走査型トンネル分光スペクトルの取得は以前困難なことが多かった。そこで本年度は、走査探針の徹底した高品質化を試みた。具体的には、探針先端部の原子が常に安定になるように、タングステンのく111>方向に長い単結晶棒を探針材料として用いた。この棒を電解研磨によって先鋭化した後、電界イオン顕微鏡を用いて先端の原子構造を観測しつつ、電界蒸発法によって清浄化、先鋭化を行った。このような方法を用いることでSTMの安定度は飛躍的に向上し、10時間にも及ぶ長時間の走査が可能になった。現在^3He冷凍機の組み込みを行っており、0.3Kまでの低温で磁束芯分光が可能な環境が完成したといえる。 NbSe_2の電子状態に関しては、様々な純度を持つ試料の電子比熱係数の磁場依存性を測定し、試料全体の準粒子状態密度が、純度が向上するにしたがって通常期待される磁場に比例した振る舞いから大きく逸脱することを見出した。この結果は準粒子の平均自由行程が伸びることによって、古典的な磁束芯の描像が破綻することを示唆するように思えるが、重イオン照射によって多数のピン止め中心を導入した試料でも同様な異常が観測されたことから、異常の原因は磁束芯外部にあることがわかった。NbSe_2では超伝導と電荷密度波(CDW)が共存するが、詳細な電気抵抗率の測定とSTMによるCDWの直接観測の結果、純度が向上するにしたがって、CDWのドメイン境界が減少することがわかった。今後このようなCDWの相関と超伝導の関係について、走査型トンネル分光を用いてさらに調べることを予定している。
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