研究課題/領域番号 |
12450005
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研究機関 | 東京大学 |
研究代表者 |
深津 晋 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助教授 (60199164)
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研究分担者 |
川本 清 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 助手 (40302822)
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キーワード | シリコンベース量子構造 / 実空間トランスファ / エネルギー緩和 / 遠赤外光発生 / 異常反射率 / シリコンチャネル高移動度トランジスタ / SiGe-OI / 電子・光閉じ込め |
研究概要 |
本研究の目的は、シリコンベース量子構造における実空間トランスファを利用することにより、サブバンド間遷移に基づく遠赤外光発生を試みることである。本年度では、シリコンチャネルの高移動度トランジスタ(HEMT)構造における電子の実空間トランスファの検証、バリアからチャネルへのエネルギー緩和に伴う赤外光発生と導波路構造化へのステップとなるSiGe-OI構造化を試みた。 面内電場印加による電子ヒーティングとそれに伴う実空間トランスファを観測すべく、組成傾斜ゲルマニウム混晶バッファを有するn型シリコンチャネルに面内電極を設けた構造を用いた。低温での光励起蛍光により、電場印加に伴ってシリコン井戸の発光強度が弱まる一方、バリア層からの蛍光が増大する様子が観測された。これは電場で加速された電子がバリアに横溢する実空間トランスファに相当すると考えられる。一方、興味深い現象として、交流電場印加の反射分光によりバリア端エネルギー付近においてシリコンより数桁大きな異常反射率変調が得られた。 さらに、励起光をあてずに電場のみを印加した状態で発光を観測したところ、2ミクロンを越える領域にブロードな背景光が観測された。この波長は予想される値よりも短く、高エネルギーに励起された電子の緩和に関係していると考えられる。中赤外領域以降での光強度は分散法の限界以下であり、固体検出器の変更まで含め高感度検出法の利用、電子閉じ込め構造の適用などが今後の課題として残された。 一方、遠赤外光の高効率発生に必要な電子・光閉じ込め環境に関しては、SiGe-OI上のHEMT構造形成への足がかりをつかんだ。SiGe-OI表面では酸化層の影響により再成長エピタキシが破綻するが、Ge組成を18%程度にすることで通常のクリーニング過程を経て再成長とHEMTの形成が可能であることを見出した。
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