研究概要 |
我々の開発した電気化学的ドープErドープ多孔質シリコンの1.54μm発光は,温度消光(低温強度に対する室温強度の比)が1-2桁と,Erドープc-siの2-3桁に比し小さい.さらに,多孔質シリコンを軽く熱酸化した後にErをドープすることにより,低温発光強度が1-2桁増加し,かつ,1温度消光が1桁以下に低減され,強い室温発光が得られる.我々は,この原因をErとSi中のキャリヤとが薄い酸化膜層で分離されることと予測し,ErとSi中のキャリヤとの間のエネルギー授受のダイナミクスを,両者を分離する酸化膜の厚さの関数として観測し,その物理的要因を明らかにするとともに,室温1.54μm発光素子の設計指針を得ることを目的とした. まず,Erドープ前の熱酸化時間を変化させた(酸化温度:900℃)Erドープ多孔質シリコン試料を作製し、Si中のキャリヤからEr^<3+>イオンへのエネルギー伝達と,2ビーム法によるオージェクエンチング測定からその逆過程であるエネルギーバックフローを求めた.その結果,熱酸化時間の増加にともない,エネルギー伝達,バックフローともに減少するが,エネルギーバックフローの方が急速に減少することが判明した. 多孔質シリコンでは,内部の微細構造が複雑であり酸化膜厚さ等の曖味さが残ることから、Si単結晶フラット基板を用いてEr/SiO_2/Si総を作製し,SiO_2膜厚の関数としてEr1.54μm発光強度の変化を観測した.その結果は,Erドープ多孔質シリコンの結果とほぼ同様であった.結論として,SiO_2膜でErとキャリヤとを分離することにより,エネルギーバックフローを大きく抑制しすることが可能で,エネルギー伝達の減少を十分カバーする.SiO_2膜がおよそ2nmのときに温度消光は1/2-1/3程度に抑えられ,室温発光強度が最大となった.
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