研究概要 |
今期、ハーフメタルとしてLa_<0.7>Sr_<0.3>MnO_3(LSMO)を適用したトンネル接合(基本構造:Co_<1-x>Fe_x/絶縁層/LSMO)の作製とその特性評価を行った。ここで,スピン分極率が1であるLSMOをスピンアナライザーとして利用して,強磁性体/絶縁層(SrTiO_3,Al_2O_3)界面の局所電子状態密度(LDOS)を評価するとともに,トンネル磁気抵抗効果(TMR)を支配する要因について解析した。 本研究では,新たにMnIr反強磁性層を用いた磁化の固定化(スピンバルブ化)技術を導入することにより、磁場依存性に関する磁化と抵抗変化の挙動の一致を確認した。さらに,Co_<1-x>Fe_x系における組成xを0,0.1と変えた接合特性の系統的比較から、観測されたインバース型のMR効果が、スピン依存トンネル伝導であることを明らかにした。また、インバースMR効果に対する障壁層の材料依存性や膜厚依存性に関する基本データを取得しており、この現象の本質的なメカニズム解明への手がかりを得ている。 主要課題であるTMRのバイアス電圧依存性については、Co_<1-x>Fe_xのLDOSの第1原理計算の結果と比較することにより、解析を進めた。インバースMRのバイアス依存性の測定結果とCo_<1-x>Fe_xの計算の結果との一致から、そのMRの符号とバイアス依存性が、Co_<1-x>Fe_xの負のスピン分極率とフェルミ面近傍での状態密度スペクトルを反映したものであることが明らかになった。 高T_0ハーフメタルとしてSr_2FeMoO_6系の薄膜の作製とその基本物性の評価を行った。スパッタリング法による薄膜成長技術により、結晶性、磁気特性、電気伝導性に優れた薄膜が作製できることを確認した。また、Sr_2FeMoO_6では、高T_0であること以外にも磁気光学カー効果の大きいといった新しい知見も得ており、TMR素子や光によるスピン制御などへの適用が可能であることを示した。
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