研究概要 |
本年度は,GaN系半導体における非輻射再結合過程について,非発光過程によって生じる熱を屈折率変化として高感度でとらえる過渡回折格子(Transient Grating ; TG)法と熱レンズ(Transient Lens ; TL)法を用いて評価・解析を行った。本年度は,貫通転位と熱信号の相関を明らかにするために,サファイア基板上に通常の方法で作製した試料のみならず,横方向選択成長法の一つであるABLEG (Air-Bridged Lateral Epitaxial Growth)法による低転位密度試料の評価を行った。 (1)通常の方法で作製したGaNのTG測定を行い膜厚10μmの試料に対してk-q^2プロットから熱伝導度を決定し,2.28Wcm^<-1>K^<-1>という値を得た。これは,一般的に知られたGaNの熱伝導度1.3Wcm^<-1>K^<-1>と比べて大きく結晶性の向上に起因するものと考えられる。 (2)上記GaNとABLEG-GaNのTG/TL測定を行い,TG信号において減衰寿命の短いキャリア成分と減衰寿命の長い熱成分を分離して観測した。ABLEG-GaNにおいては,非輻射再結合によって発生する熱の成分が小さいことが明らかにされた。両者の試料で,顕微TL信号を観測し貫通転位の多い領域では低温においても発熱量が0でないことが分かった。 (3)ABLEG-GaN上に作製したIn_xGa_<1-x>N(x=1,2,3%)においてTG測定を行った。Inの添加量が増えるとTG信号の相対熱強度がx=1%で少し増えx=2%,3%では減少することが分かった。,これは,フォトルミネッセンスの積分強度のIn組成依存性とは逆の傾向であり,発光過程と非発光過程が相補的に測定できていることが実証された。
|