研究概要 |
GaN系半導体光デバイスの発光効率を改善するには,光励起・電流注入で発生したキャリアのダイナミクスの解明が必要である。特に室温では大部分のキャリアが非輻射再結合により失活するため,その機構を解明し,低減することが発光効率改善につながる。GaNにおいて貫通転位密が非輻射再結合中心として作用することが報告されており,それを低減するために,横方向選択成長技術によってTDD=10^6cm^2程度の低転位GaNが実現されてきた。このような低転位GaNを用いて,非輻射再結合と貫通転位の関係が様々な分光学的手法で研究されているが,非輻射再結合によって生じる熱を直接観測した例はほとんどなかった。そこで本研究プロジェクトでは,3次非線形光学効果を利用した過渡グレーティング法を用いることにより,GaNにおけるキャリアの拡散や非輻射再結合による発熱・伝導といった重要であるにもかかわらず観測困難だった非発光過程の観測に成功し,報告してきた。本年度は,過渡レンズ法を光学顕微鏡と組み合わせた顕微過渡レンズ法を開発し,低転位GaNの光熱変換過程の時間-空間分解計測を試みたところ,GaNの非輻射再結合による発熱量,熱伝導が3μmの空間分解において得られた。その結果,貫通転位が励起後形成された励起子の非輻射再結合中心として作用していることがわかった。このような過程は,従来の発光検出に基づく手法では観測困難で,熱を直接検出して始めて観測できた。さらに,空間分解能の高い近接場光学顕微鏡システムも構築し,高い時間。空間分解能を有する測定系への展開も実現した。
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