「イオン線照射による空孔の過剰導入及びその緩和過程とSiボンド再配列の相関解明」に関する研究を行った。分子線エピタキシャル成長装置を用いてガラス基板上に不純物を含まず且つ稠密性の高い非晶質Si層を形成し、パルスイオン線照射装置を用いて広範囲のドーズレート(10^<10>-10^<15>ions/cm^2・s)でイオン線を照射した。パルスイオン線照射装置により、任意のデューテイ比の繰り返しでパルス照射の実験を行った。非晶質Si層に導入する空孔数を動的に制御すると同時に、照射時の試料温度を制御する事で空孔の緩和過程を制御する手法を探索した。 室温から300℃の照射温度において、Si中の照射誘起欠陥の緩和速度を測定し、照射誘起欠陥の緩和エネルギーは0.4eVであることを明らかにした。即ち、室温から300℃に昇温することにより、緩和速度を約1000倍、促進することが出来た。 現在、イオン照射された非晶質Si層のボンド再配列及び再配列に伴う結晶核発生の様子を、分光エリプソメトリー、赤外吸収法、ラマン分光法、及び微小粒径Si電気的評価装置を用いて評価している。この成果を基に、過剰空孔の導入過程及び緩和過程と、ボンド再配列との相関を解明して行く。
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