絶縁膜上における擬似単結晶Siの実現を目的とし、本年度は「ボンド再配列の制御による発生核の位置・形状制御」及び「核を種とした横方向固相成長」に関する研究を行った。 イオン線照射された非晶質Si層のボンド再配列及び再配列に伴う結晶核発生の様子を、分光エリプソメトリー、赤外分光法、及びラマン分光法を用いて評価した。その結果、800〜900℃における結晶核形成速度がイオン線照射により約2倍に向上することが明らかになった。これはイオン線照射による非晶質膜の原子結合形態の変調により、ボンド再配列が容易化したためと考えられる。局所領域にイオン線照射を施せば、核発生の位置・形状制御が可能である。そこで、集束イオン線照射装置を用い、室温〜400℃のSi結晶に空間分解能10nmでイオン線照射を施し、照射効果が及ぶ空間的拡がり(ぼけ)の基板温度依存性を評価した。その結果、基板温度の増加に伴い、照射効果が及ぶ空間的拡がりは減少すること、その減少は非晶質Siの固相成長に起因する可能性が高いことを明らかにした。即ち、基板温度400℃程度で集束イオン線照射を施すことにより、空間分解能10nm程度で発生核の位置・形状が制御可能であると期待される。 この成果を基に、結晶核の結晶方位及び固相成長Si層の結晶性、物性を詳細に評価して行く。
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