過剰空孔の導入及びその緩和過程制御による擬似単結晶Si形成技術の研究を総括し、デバイス応用への展開を図る事を目的とし、本年度(最終年度)は、擬似単結晶Siの形成プロセスを最適化すると共に、得られた擬似単結晶Siの物性解明を行った。 前年度は、熱処理中にイオン線照射を行い、固相成長時に空孔の過剰導入を行ったが、今年度は、固相成長の前段階でイオン線照射を行い、照射で固相成長がどのように変調されるかを検討した。その結果、絶縁膜上に堆積した非晶質Siにイオン線照射(基板温度:室温)を行い、Si薄膜の非晶質性を変調する事により、結晶核の発生速度が、約10倍に向上する事が明らかとなった。これは、イオン線照射により、非晶質Si薄膜の緻密性が変化した事に起因している。即ち、前年度に検討した、固相成長時に過剰空孔を導入する方法(イオン線照射誘起固相成長)との融合が結晶核の形成促進、固相成長の低温下には重要である事が判明した。 本法により形成した擬似単結晶Siの物性を分光エリプソメトリ法、X線回折法及び顕微ラマン分光法等を用いて詳細に評価した結果、擬似単結晶Siの結晶化度(単結晶Si:100%、非晶質Si:0%)は80%に達し、且つ結晶粒の内部応力が完全に緩和されており、その為、単結晶Siに匹敵するバンド構造を有している事が判明した。即ち電子デバイスへの応用に必要な要因を備えている事がわかる。 今後は、擬似単結晶Siの電気的特性評価を行うと共に、デバイス試作を行う予定である。
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