ULSIとディスプレイの融合を目指し、絶縁膜上におけるSiGe擬似単結晶薄膜の低温形成プロセスの研究を行い、以下の成果を得た。 1.イオン線照射による結晶核の低温度形成 非晶質Siの固相成長過程は結晶核の発生(活性化エネルギー:3.7eV)とそれを種とした核成長(2.7eV)に大別できる。従って固相成長の低温化には、核発生に要する活性化エネルギーの低下が鍵となる。固相成長は、空孔を介在とし構成原子がボンドを再配列することにより進行するから、Si-Siボンドの結合を弱めることにより、核形成に要する活性化エネルギーの低下が期待できる。そこで、非晶質Si薄膜へのGe原子導入或いはイオン線照射等を行い、ボンド結合を変調させ、核発生温度低下の可能性を調べた。非晶質SiにGe導入を行い、且つ熱処理中にイオン線照射を併用する事で結晶核の発生頻度を大幅に促進した。その結果、従来(非晶質Siの熱的固相成長)は700℃を必要とした固相成長が500℃迄に低温化した。 2.Ge局所導入による結晶核の方位制御 絶縁膜上に堆積した非晶質Siの固相成長層には種々の面方位を有する結晶粒がランダムに混在する。これは、結晶核の発生領域が局在化されていない為、ランダムな結晶方位を有するバルク核が優先的に発生する為である。もし、非晶質Si/SiO_2界面のみで選択的に結晶核が発生できれば、自由エネルギーの差により、結晶核の方位を揃える起動力が発現する可能性がある。そこで、核発生の空間位置を制御し、結晶方位を揃える事を目的とし、非晶質Si薄膜の局所位置にGe原子を導入する手法を検討した。その結果、非晶質Si内部に10nm以上の膜厚を有すGe薄膜を局在導入する事により、結晶核の発生位置制御が可能となった。特にSi/SiO_2界面にGe薄膜を挿入する事により、界面核の選択的発生が実現し、結晶方位制御の道が拓かれた。
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