本研究計画は、近接場光が存在する光学境界面で微粒子や蛋白分子などを観測・操作するために、近接場でそれらの粒子が受けるエバネッセントフォトン力を利用して(1)微粒子等を回折限界以下の分解能で観測する超解像顕微法の開発、(2)先端に集束構造を持たせた特殊形状の光ファイバーマニピュレーターを開発して微粒子等を捕捉、操作させるシステムの開発、および(3)これらを統合した近接場領域における分子や微粒子の反応、合成を可能にするシステムを開発することが目的である。 今年度は、エバネッセント波によるフォトン力を直接計測するために、先鋭化光ファイバーをカンチレバーとしてエバネッセント領域に挿入することにより、強度変調レーザーにより誘起されたエバネッセントフォトン力を検出することを試みた結果、大きさ50pN程度の力が先鋭化ファイバー先端に働いていることが明らかとなった。この大きさは電磁場理論による解析の結果ともほぼオーダー的に一致している。さらにエバネッセントフォトン力の検出実験において対向させたレザービームによって互いに方向が逆向きのエバネッセントフォトン力をプリズム表面上に誘起させ、これによってプリズム表面上の微粒子の位置制御に利用できることを着想し、実際にYAGレーザーを二分割させてプリズム状に対向するエバネッセント場を発生させ、その位置及びレーザー強度を調節することで直径10μm程度の微粒子を一次元ではあるが、毎秒数十μmの速度で位置決めすることに成功した。
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