本研究は、近接場光が存在する光学境界面で微粒子や蛋白分子などを観測・操作するために、近接場でそれらの粒子が受けるエバネッセントフォトン力を利用して(1)微粒子等を回折限界以下の分解能で観測する超解像顕微法の開発、(2)先端に集束構造を持たせた特殊形状の光ファイバーマニピュレーターを開発して微粒子等を捕捉、操作させるシステムの開発、および(3)これらを統合した近接場領域における分子や微粒子の反応、合成を可能にするシステムを開発することを目的とし、以下のような研究成果が得られた。 1)光ファイバーマニピュレータとして、光ファイバー端面に直径10μmのラテックス球を接着させる方法を考案し、最適な集束光学系を明らかにするため、FDTD法によって電磁場解析を行い集束光学系における出射パターンを計算し、微粒子操作・捕捉が可能な構造を設計した。 2)製作した光マニピュレータを用いて、YAGレーザー光(波長1.06μm)を導波させて水中において微粒子を操作捕捉できることを明らかにした。とりわけ、直径40nmの金微粒子を捕捉、操作できることを実験的に明らかにし、複数金微粒子を配列するのに成功した。 3)集束機能を持たせた先端球型光ファイバーマニピュレータの球先端に、直径100mmオーダーの金微粒子を固定させる技術を開発し、エバネッセント場内において光波を散乱させることに成功した。 4)プリズムに臨界角以上の入射角で、二本の対向レザービームを入射させて逆向きのエバネッセントフォトン力をプリズム表面上に誘起させ、レーザー強度を調節することでプリズム表面上の直径10μm程度の微粒子を、毎秒数十μmの速度で位置決めすることに成功した。 5)エバネッセント界面における微小物体を非接触・非破壊的に駆動位置決めを行う新規な技術として、エバネッセントフォトン力による方法を開発し、2次元面内において粒径20ミクロンのラテックスの位置を制御できることを示した。
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