研究概要 |
フェムト秒レーザーを回折限界まで絞り込んだ際の,光と生体物質の相互作用について基礎実験を行った.パルス幅100fs,中心波長800nmのチタンサファイアレーザーを用いて高精度顕微鏡光学系の設計・試作を行った.対物レンズとしては,現有の水侵レンズ(NA=1.0,オリンパス)を用いた.ラットの赤血球,心筋細胞膜,毛細血管壁に,収束近赤外フェムト秒レーザーを導入し,入射パワーと誘電破壊された領域の大きさの関係を求めた.このとき,レーザービームの径を変えることによりNAを変化させ,また,電場増強のため金コロイドを細胞膜表面に付着させ,ナノメートルサージェリーヘの最適な条件を見つけた.金コロイドのローカルプラズモンによる電場増強の効果について見積もり,実験結果と比較した.試料の誘電破壊された領域のサイズを測るには,試料を乾燥させたうえで,金コートし,電子顕微鏡を用いた.このような多光子吸収による物質の誘電破壊のプロセスを,焦点付近の電場分布とその光吸収・プラズマ化の分布,さらに多くの光子の吸収の時間空間発展を計算することによりシミュレートし,このとき得られるサージェリー(加工)サイズと実験で得られたサイズを比較した.さらに,最適な光パルス幅を計算機シミュレーションにより求めた.さらに,発生する熱と温度分布をフェムト秒の時間分解能で計算し,その蛋白質などへ与える生物学的効果について検討した.
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