研究概要 |
本研究者は非線形誘電率のミクロな分布の計測から強誘電材料の残留分極分布の計測等が行える顕微鏡システム(走査型非線形誘電率顕微鏡)を考案試作し報告した.これを用いると非線形誘電率のミクロな分布が測定でき,かつ純電気的方法で簡単に強誘電材料中の永久分極分布が観測できる. 本研究では,新たにサブナノメータ領域で強誘電体の分極を可視化できる超高分解能走査型非線形誘電率顕微鏡システムを開発した.次にこのシステムを用いて強誘電体単結晶中の双極子モーメント像(原子分解能での分極像)の可視化に挑戦しほぼ原子分解能が得られる証拠を得るに至った.またより分解能が向上する高次非線形誘電率顕微鏡の開発に成功し,強誘電体表面に自然に成長した1ないし2ユニットセルの厚さをもつ常誘電層の観測に成功した. 更に,横方向の分極も計測できる3次元分極計測用新型走査型非線形誘電率顕微鏡の開発にも成功した.これにより総ての方向の分極のナノスケールでの観測が可能となった. 上記非線形誘電率顕微鏡のプロトタイプは大気中で観測を行うタイプのものであり,測定試料によっては表面吸着層などの為,原子分解能(双極子像)を得ることが困難になる.安定的に超高分解能観測を行う為には,非常にクリーンな結晶表面を超高真空中で観察する必要がある.そこで新たに超高真空中で動作する走査型非線形誘電率顕微鏡の開発に着手した.この完成により安定した原子分解能が得られる可能性が断然高くなると考えられる.
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