本年度は、反射型スリットを用いた微小光源の作成、及びそれを用いたGabor型X線ホログラフィーの開発を行なった。反射型スリットは、ガラス上にAuをライン状に蒸着し適当な斜入射角でX線を反射させることにより、実質的にAuの蒸着パターンの幅の1/100以下のスリットにしてコヒーレントなX線源とするものである。放射光光源Spring-8 BL47XU及びPhoton Factory BL3C2のエネルギー8〜9keVのX線を用いて、以下3種の実験を行なった。 (a)2本のAu蒸着ラインを近接させて作成し、ダブルスリットとして用いることによりX線によるヤングの干渉実験を行なった。数10本の干渉縞が観察され、また片方の光路に位相物体を置くことにより干渉縞のずれも観察された。 (b)平面及び円柱状のガラスに単一のAuラインを作成し、これをスリットとしたGabor型ホログラフィー実験を行なった。平面を用いた場合は1次元方向に拡大されたホログラムが得られた。また円柱状反射面を用いた場合は2次元的に拡大されたホログラムが得られたが、拡大方向に平行に微細なライン状のアーティファクトがのってしまうことがわかった。 (c)ゾーンプレートを集光素子として用い、その集光点状に直径0.65mmのガラスキャピラリを2本KBミラーと同様の配置でセットして反射させることにより微小なピンホールとして作用させ、そこからの発散X線によりGabor型ホログラフィーを行なった。Cuワイヤー等X線に対してコントラストの大きな試料では、0.1μmの分解能に対応する干渉縞も得ることができ、ガラスキャピラリーによって実質的に光源のサイズが縮小されていることが確認できた。また、珪藻や赤血球等の乾燥した生物試料のX線エネルギー9keVにおけるホログラムを観察することができた。 なお、これらの成果は現在発表準備中である。また、当初は年度内に新たなホログラフィー用チャンバーの作成を完了する予定であったが、これらの実験結果を踏まえて改良を行なったために設計が年度末にずれ込むこととなった。新規に作成したチャンバーを用いた実験は来年度より開始する。
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