研究課題
本年度は昨年度に引き続きSPring-8 BL20XUにおいてレンズレスフーリエ変換ホログラフィーの実験を行った。この放射光ビームラインのフロントエンドスリットを0.1〜0.2mmとし、そこから約200m離れた位置に光学系を作成した。ゾーンプレート(直径155μm,最外輪帯幅0.1μm)を用いてその集光点を参照光源とし、ゾーンプレートの0次透過光を試料の照明光として、X線エネルギー10keVにて干渉縞をCCDカメラに記録した。この光学系にて、以下の実験を行った。(a)エネルギー10keVのX線で0.2μmの大きさの参照光源が得られた。また、Taテストパターンの分解能評価では、0.2μmの線幅まで分解結像することができた。また、試料を0.2〜0.4μm移動させた2枚のホログラム間で割り算したホログラムを再構成することにより、バックグラウンドの少ないエッジ強調された像がほとんど吸収の無い0.8μmポリスチレン球でも得られることがわかった。(b)上記光学系では試料の照明光は平行X線を用いているため,CCDが飽和してしまうことを防ぐためCCD手前にビームストップを設けてこの照明光をカットする必要があった。そのため、試料からの低次の回折光が再構成に寄与しないため、得られた再構成像は暗視野像に近かった。そこで、今回新しくもう1枚同じ仕様のゾーンプレートを上記光学系のゾーンプレートと直列に僅かに光軸から離して設置し、このゾーンプレートの1次集光点からの発散X線で試料を照明する光学系を開発した。この光学系では発散X線で試料を照明するため、CCD面上では十分に照明光自体が弱まり試料からの低次の回折光も記録することができる。この光学系をテストした結果、(a)と同様にTaテストパターンを0.2μmの線幅まで分解結像することができた。また、暗視野像ではない比較的均一な像を得ることができた。これらの成果は2002年7月のX線顕微鏡国際会議招待講演として公表し、現在そのプロシーディングがJournal de Physique IVから出版予定である。
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