本研究では、Gaborホログラフィー、及びレンズレス・フーリエ変換ホログラフィー光学系を中心に、(a)硬X線ホログラフィーの分解能をサブミクロンの領域まで高めること、(b)試料の定量的な位相再構成、さらに(c)3次元位相再構成を目指した。SPring-8のX線アンジュレーター光源とゾーンプレートを組み合わせることにより、(a)空間分解能では、Gaborホログラフィー及びレンズレス・フーリエ変換ホログラフィーの両方で、10keVのX線を用いて線幅100nmを分解結像できるようになった。これは、現時点で世界最高である。また(b)のために、新しくゾーンプレートを2枚用いた干渉計によるX線レンズレス・フーリエ変換ホログラフィーの方法を開発した。この方法によって、これまでの方法では記録できなかった空間周波数の低周波成分が記録出来るようになり、エッシのみの強調ではない全体像が得られるようになった。この方法とトモグラフィーを組み合わせた3次元位相再構成も試みている。また、同時にPhoton Factoryにて開発を行ったゾーンプレート硬X線位相差顕微鏡では、アルミ位相板を用いた位相コントラスト像で、線幅100nmを9keVにて分解結像できた。 他に、コヒーレントな微小点光源を作成するために微小領域からの全反射を利用した反射型スリットの検証実験を行い、これによって2次光源サイズが縮小できていることが確認できた。反射の不均一性などの問題もあるが、参照点光源の大きさが分解能を決めるホログラフィーでは、高分解能化の一つの方法となり得ると考えられる。
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