研究概要 |
本課題では,「離散凸解析」の応用分野を開拓することを主たる目的としている.本年度は以下の成果をあげ.これらは論文としてまとめ,学会等での口頭発表,学術雑誌への投稿を行なった. ・[室田,塩浦]1996年に室田が提案したM凸・L凸関数の概念は,整数格子点集合の上の凸関数と言うべき概念である.M凸・L凸関数はそれ自身様々な応用例をもつが,社会工学・経済学などから生じる例の中には,この枠組みでは捉えきれないものも数多く存在する.M凸・L凸関数の概念を拡張する研究として,整数格子点集合上での擬凸関数と言うべき「擬M凸関数」「擬L凸関数」という概念を提案した. ・[室田,田村]M凸関数はマトロイドや劣モジュラ関数の拡張として,離散数学の分野で誕生した概念である.一方,数理経済学においては,劣モジュラ性は限界効用逓減を意味し重要な概念であるが,Danilov-Koshevoy-MurotaによるM凸性と均衡存在の関係の研究は数理経済学と離散凸解析を結び付けるものであった.ここでは,交換経済に均衡が存在するための十分条件である粗代替性や単改良性によるM凸関数の特徴付けをあたえることで,数理経済学におけるM凸関数の妥当性を示した. ・[室田,田村]経済均衡の計算の一般的方法は不動点アルゴリズムの利用であるが,不可分財を含むモデルにおいては均衡の整数性をいかに確保するかが問題点ある.一方,割当市場型のモデルにおいてはオークションを模倣したアルゴリズムが提案されているが,その計算効率に問題点がある.ここでは,費用関数と効用関数がそれぞれM凸性,M凹性をもつ場合に,均衡を効率的に求める方法を開発した.
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