研究概要 |
機器・構造物の定期検査は運転を停止した状態で行われ,そのためにき裂は閉じた状態で非破壊検査に供される場合が多い。本研究は,閉じた微小き裂の寸法を正確に非破壊評価し,重ねてき裂閉口圧(応力)の非破壊定量評価をも可能とする高感度超音波探傷手法の原理の構築を目的としたものである。本年度は以下の実績を得た。 1.斜角横波超音波の閉じたき裂に対する応答ならびにその機構の解明 はじめに,種々の閉じ具合で微小な深さの二次元疲労き裂を有する試験片を作製し,これら試験片(裏面き裂)を用いて斜角探傷による横波超音波応答の感度を60〜70゜を含む種々の屈折角に対して系統的に比較した。その結果,屈折角40゜において横波応答が最大となったが,き裂深さの増加に伴う,エコー高さの増加はき裂深さ2mmで飽和した。一方,60〜70゜の屈折角では,き裂のより広い寸法範囲に対してもエコー高さの増加が確認できたが,横波応答は屈折角40゜に比べて著しく低く,微小入射角の縦波応答と同程度という知見を得た。以上より,き裂の広い寸法範囲に対して有効で,最も高感度な応答を実現する屈折角を50゜と特定した。 2.閉口き裂に対する斜角横波超音波応答の理論モデルの構築 微小な二次元き裂を対象としてその深さ,き裂閉口圧に対する斜角横波超音波の応答・受信強度の簡易解析モデルを検討した。き裂深さ,き裂閉口圧の情報を含む横波応答曲線の形状に着目し,き裂閉口圧に依存して生じるき裂面での超音波の反射を組み込んだ斜角横波超音波受信強度分布の簡易解析モデルを用いることで,き裂閉口圧,き裂深さを逆問題解析により評価することに着手した。
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