研究概要 |
機器・構造物の定期検査は運転を停止した状態で行われ,そのためにき裂は閉じた状態で非破壊検査に供されることが多い。本研究は,閉じた微小き裂の寸法を正確に非破壊評価し,重ねてき裂閉口圧(応力)の非破壊定量評価をも可能とする高感度超音波深傷手法の原理の構築を目的としたものである。本年度は簡易型の逆問題解析によるき裂寸法・閉口圧の評価と検証を実施し,以下の実績を得た。 1.微小な深さの二次元閉口き裂による検証 はじめに種々の条件で微小な深さの二次閉口き裂を有する試験片を作製し,斜角横波超音波深傷(屈折角50^o)に供して受信強度分布を得,閉口き裂と開口き裂に対する受信強度比で与えられる反射係数と閉口圧との関係を得た。さらにこの関係を,前年度に構築した微小な二次元き裂を対象としたき裂深さ,き裂閉口圧に対する斜角横波超音波の応答・受信強度の簡易解析モデルと照合することで,未知の二次元閉口き裂のき裂閉口圧(圧力),き裂深さを逆問題解析により評価することに成功した。また破面観察との比較により本評価法の妥当性を検証した。 2.微小な三次元閉口き裂への展開 上記二次元き裂による検討を踏まえ,微小な三次元閉口き裂に本手法を展開した。微小な三次元き裂では二次元き裂の場合あるいは大きなき裂の場合と異なり,音場の一部でき裂が捕らえられることを考慮して,三次元き裂前縁に沿って微小区間毎に逆問題解析を実施することにより,項目1.で構築した評価法を微小な三次元閉口き裂へ適用可能にした。 3.微小な三次元閉口き裂による検証 微小な三次元閉口き裂を有する試験片を種々の条件で作製し,項目2.で検討した方法により逆問題解析を実施することで,微小な三次元閉口き裂閉口圧(応力),き裂形状を評価した。また破面観察との比較により本評価法の妥当性を検証した。
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