研究概要 |
溶接構造物には,溶接線近傍に沿って固有ひずみ(熱ひずみ,塑性ひずみ,変態ひずみなど)が残留し,これが溶接残留応力の生成の原因となる.申請者らは,溶接部の余盛りを除去する際の,弾性解放ひずみを逆問題解析することにより,固有ひずみを推定し,この固有ひずみから溶接残留応力を推定する「ビードフラッシュ法」を提案してきている.この手法の確立のためには,固有ひずみの基本特性を明確にする必要がある.そこで,本研究では,溶接過程のシミュレーションを行い,その特性評価を行い,以下の結果を得た. (1)溶接の弾塑性解析:実際の溶接に際しては,溶接時の角変形を防止するため,溶接板に拘束を加える.溶接シミュレーションにより,この拘束がビードフラッシュ法の精度に及ぼす影響を評価し,拘束がない場合との比較において考察を加えた. (2)固有ひずみの特性評価:従来のビードフラッシュ法では,溶接線方向に沿って固有ひずみ分布は一定と仮定した.しかし,この仮定は一般には成立しない.そこで,溶接シミュレーションにより,固有ひずみの溶接線方向分布に及ぼす影響因子(入熱量,板厚,板幅,溶接速度,開先形状,溶接パス数)の影響を明らかにした. (3)固有ひずみ特性のビードフラッシュ法への適用:以上の結果を基に,ビードフラッシュ法の溶接固有ひずみの逆問題解析時において,固有ひずみの解空間をどのように限定することができるかを明らかにした.
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