研究概要 |
平成12年度の成果は以下の通りである. 1 70,000要素規模の歪みの少ない胸郭付脊柱有限要素モデルを構築した.市販の脊柱表面データを活用し,汎用有限要素プログラムの自動要素分割機能を利用して椎体の幾何学的形状をモデル化した.皮質骨,海綿骨の弾性係数は,椎間板と比較して百倍から一万倍程度剛性が高いために脊柱の挙動に与える影響は少ないと考え,文献のデータを採用した.椎間板及び軟骨,靭帯の弾性係数は,報告されている成人男性靭帯付摘出脊柱の曲げ実験の結果と本有限要素モデルの結果との比較において同定した. 2 この胸郭付脊柱有限要素モデルを用いて,成長部位を変化させた49ケースについて1次から7次あるいは8次までの座屈解析を行った.境界条件として仙椎完全固定を仮定し.椎体の成長は熱膨張ひずみによって与えた.解析には汎用有限要素法解析プログラムMSC.Nastran version 7.0を用いた.その結果,特発性側彎症におけるシングルカーブおよびダブルカーブの成因はそれぞれ4次モードおよび6次モードである可能性が示された.また,成長部位と座屈モードの次数に基づいて特発性側彎症の形態を力学的に分類することも可能であると思われる. 3 一方,座屈現象を実験的に検証するために,今年度から脊柱力学模型の製作を開始した.市販の3次元切削加工機によって,有限要素モデルのデータから椎骨の原型と椎間板のメス型を作成し,その複製により脊柱力学模型を構築した.成長機構には楔機構を採用した.椎骨と楔には硬質無発泡ポリウレタン,椎間板にはシリコーンゴム,椎間関節にはシリコーン系充填剤を使用した.製作した力学模型の曲げ実験を行った結果,摘出脊柱に比べ,曲げ剛性が1/3程度であることが確認された.来年度は,材料の改良によって摘出脊柱と同様な力学特性を有する力学模型を完成させる予定である.
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